今年も残すところ一か月弱となりましたが、患者の権利を守る会は立正佼成会附属佼成病院に公開質問状(23)を送付しました。今回は映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』をテーマにしました。
立正佼成会附属佼成病院
病院長 甲能直幸 様
公 開 質 問 状(23)
2020年12月14日
前略
実写映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』(2020年11月13日公開原作 中山七里『ドクター・デスの遺産』)を観賞しました。安楽死を手口とするクライム・サスペンスです。積極的安楽死を行った実在のロシア系アメリカ人医師をモデルとしています。日本人には手塚治虫『ブラック・ジャック』のドクター・キリコの方が分かりやすいかも知れません。京都ALS患者嘱託殺人事件が起きたばかりであり、タイムリーなテーマです。林田医療裁判とも重なります。
ドクター・デスと名乗る人物は、死を美しいと考えます。そして「安らかで苦痛のない死を提供する」また「美しい死、家族は喜んでいる」など自身の理念を家族に語ります。
安楽死の是非は倫理学のテーマになりますが、映画の実態は「死ぬ権利」を尊重という奇麗な話ではないことが浮かび上がります。ターゲットになった患者に「安らかな死は美しい。本当は、家族は迷惑している」など自身の理念を吹き込みます。患者は、「家族に負担をかけたくない」という考えが中心的な動機になって行きやがて死を自己決定します。ドクター・デスは、患者・家族の弱みに付け込み死の方向に誘導します。
誘導によって患者は、死を選ぶことになるのですが動機は、本人の「生きたい」「死にたい」という主観的願望とは違うことに気づかされます。死を自己決定した映画の少女は、父親に電話をして「本当は死にたくなかった」と叫びます。正に、一度自己決定して死を選んでも本人の意思は変化しうるものであることを如実に表しています。
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、「時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて本人の意思が変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援が行われることが必要である。この際、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等も含めて話し合いが繰り返し行われることも必要である」と意思の変化を現実に起こりうる事態として記載しています。
佼成病院で担当された岩﨑正知医師の医師記録では、長男の治療拒否に従いその日に誤嚥性肺炎の治療を終了しました。実際、医師記録では患者本人の意思を確認した形跡はなく、複数人で協議した形跡もありません。
岩﨑医師は、治療を拒否した長男に「私の理念を理解した」と述べています。「患者の意思確認はしない。意思疎通ができないのに命を長らえても意味がない。」など岩﨑医師は自身の理念を長男に説明した結果長男は理解して母親の治療拒否に至ったものと考えます。
その後母親は、容体が悪化して行くも岩﨑医師は、長男の酸素吸入拒否に応じて患者の酸素マスクを外しました。母親が、頑張って自力呼吸をしている様子を見て岩﨑医師は、「苦しそうに見えますが今お花畑です」と説明しました。岩﨑医師の理念を知らない家族は、治療は尽くされているものと信じていました。それにしても岩﨑医師には、患者が苦しそうに呼吸をしている様子がお花畑にいる美しい光景に見えるのでしょうか? 疑問でなりません。
映画は、実在の医師をモデルとしています。医師の理念で行われた患者の死が、安らかで美しいものか、血の海の中で溺れる恐怖であるのかは、体験した本人しか分からないものと思われます。「安楽死」は、死なせる側から見て簡単に死ぬ方法に過ぎないのではないのでしょうか?
映画にしても林田医療裁判にしても医師一人患者一人の一度の取り決めだけでは偏った考えになることを暗示しています。佼成病院は、特異な理念を持った医師から患者を守る対策を採っていますか? また公開質問状質問事項3.の記載にもありますが、繰り返しの意思確認を実現するために取り組みをしていますか? している場合、その具体的内容を教えてください。
開かれた医療を進める為には、多くの市民と意見を交わすことが求められます。そしてこのような問題は、広く社会に公開して議論を深めて行くことが適切な医療を進める上で不可欠であると考えます。佼成病院からは、是非とも岩﨑正知医師の理念についてご意見をお寄せ下さることが道義的にも期待されるところです。
この質問状は、ご回答の有無に関わらずネット上に公開致します。佼成病院が適切な医療を進めるための一助になれば幸いです。ご回答は2週間以内に郵送でお願いします。いつものように第1回公開質問状を以下に掲載致しますのでご回答をお待ちいたします。
草々
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