政府の緊急事態宣言は飲食店ばかり負担を負わせ、中途半端で不十分と懸念の声が出ている。西浦博京都大学大学院教授は飲食店の制限だけでは1ヶ月で感染者は減らないと指摘する(「「飲食店の制限だけでは1ヶ月で感染者は減らない」 8割おじさんが厚労省“非公開”のシミュレーションを公開」BuzzFeed Japan 2021年1月5日)。
西浦氏の試算によると、飲食店の営業時間短縮を中心とした施策のみの場合、感染者数は2カ月後も現状とほぼ同水準にとどまった。西浦氏は「飲食店だけでなく、幅広く屋内での人の接触なども削減することが必要だ」と訴えた(「西浦教授、昨年並みで2カ月必要 飲食のみは感染者減らず」共同通信2021年1月6日)。
公務員のアリバイ作りの緊急事態宣言になっていないか。営業時間短縮は事業者にとっては営業効率が悪くなる。休業と異なり、出勤はするため、人の動きの抑制も乏しい。中途半端な緊急事態宣言では感染者数は減らず、緊急事態宣言の意味が薄れ効果が下がるというマイナスのループに陥りかねない。
東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県は国の緊急事態宣言を待たずに「一都三県 緊急事態行動」を発表した。1月8日から31日までの間、午後8時以降の不要不急の外出自粛、飲食店の営業時間短縮、テレワークの徹底などを呼びかける。営業時間の短縮要請は閉店時間を午後10時から2時間前倒しし、午後8時(酒類提供は同7時まで)にする。夜間の外出自粛が大きいが、新型コロナウイルスは夜行性になったのか。
学校を休校にしないことに批判の声が出ている。都立高校でクラスターが発生した。2020年12月26日から2021年1月3日までの間に1年生から3年生の生徒41人と教職員ら4人と合わせて45人の感染が確認された(「新型コロナ 都立高校で初のクラスター 生徒ら45人感染確認」NHK 2021年1月4日)。この事実に接しても休校を考えないとはコントである。コロナ対策は厚生労働省で、文部科学省は関係ないという縦割りの意識が公務員には骨の髄まであるのだろうか。
休校を求める学生は、休みになって嬉しいという不真面目なものではなく、登校で感染することを恐れている。コロナに感染したら受験をふいにすることになる。休校でショッピングセンターなどに出歩く不届きな学生もいるかもしれない。それで感染することは自己責任である。しかし、学校では集団行動が求められ、個人の選択ではなく、感染する危険がある。それは自己責任ではない許しがたい問題である。
首相周辺は「飲食店を午後8時で閉じればいいのにやっていなかった。小池氏の失政だ」と不満をあらわにしているとする(杉本康士、千田恒弥「政府に不満「小池氏の失政」 首相は「やんなきゃいけない」…宣言発令要請で急転」産経新聞2021年1月4日)。新型コロナウイルス感染症は東京だけでなく、全国で拡大している。東京都だけの問題ではない。責任なすりつけである。記者会見で「結果が出ている」とした北海道や大阪府は自衛隊出動まで求める事態になったことを忘れてはならない。
むしろ、大阪府は深刻な事態である。「重症者数は過去最多の171人に上り、すぐに使える病床の使用率は82・2%。昨年9月に吉村知事が今月をメドに打ち出した「1日最大2万件」の検査拡大も、1日1万件にすら届いていない。今月に入ってから、1日1800~2300件程度というありさまだ」(「吉村知事「感染拡大抑えられている」謎の強気に府民が激怒」日刊ゲンダイ2021年1月5日)
厚生労働省は看護系大学に大学院生や教員の医療現場への派遣を要望した(「厚労省 看護系大学に大学院生や教員の医療現場への派遣を要望」NHK 2021年1月5日)。これを学徒出陣になぞられる見解がある。しかし、学徒出陣は看護師免許を持たない学生を現場に投入する場合が適切なたとえになる。
今回の要望は、看護師免許を有する人々の現場への派遣である。需要の多い現場への人員の適正配置の動きと見ることができる。厚生労働省の上からの計画で人員配置を押し付けるならば、傲慢であり、そのような計画は失敗するが、都道府県が指定した「ナースセンター」に登録すると希望する日程や勤務地などに応じて派遣先を調整する仕組みである。分権的な仕組みになっている。
東京都の2021年1月5日の新規感染者数は1278人。大晦日に次ぐ過去2番目の多さになった。
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