新型コロナウイルス感染症(COVID-19; coronavirus disease 2019)の正確な被害把握は超過死亡者数が重要な指標になる。新型コロナウイルス感染症で亡くなった人々だけが新型コロナウイルスの死者ではない。超過死亡数は今年の全死者数を過去と比較して算出する値である。これによって新型コロナウイルス流行に伴う医療崩壊や医療崩壊防止を名目とした医療資源の供給抑制によって治療を受けられずに亡くなった人も含めることができる。
「イタリアでは、2月20日~3月31日の期間の新型ウイルスによる死者は1万2428人とされている。だが、過去5年間の平均と比較した同期間の「超過死亡」は2万5354人に上る」(「新型コロナ、真の被害規模示す「超過死亡」 専門家ら注目」AFPBB News 2020年5月16日)
日本でも2020年第8週から第13週に東京特別区(23区)のインフルエンザ・肺炎死亡数の超過死亡が起きている(国立感染症研究所「インフルエンザ・肺炎死亡報告」)。ところが、反PCR検査拡充派の人々は作為的なデータを用いて日本で超過死亡は発生していないと主張している問題がある(井田真人「反PCR検査拡充派の間で広まる医師ブログの不自然なデータ引用。「日本に超過死亡はない」の嘘」HARBOR BUSINESS Online 2020年5月16日)。日本は検査率を絞ったために感染者数を把握できていないと批判されたが、死者の把握でも同じ批判が出そうそうである。
超過死亡を出さないことが世界的な新型コロナウイルス収束の指標になるだろう。この点では2月という早い段階に新型コロナウイルスの院内感染が起きた立正佼成会附属佼成病院(杉並区和田、杏林学園教育関連施設)の姿勢は疑問である。佼成病院は病院での診療の半分を新型コロナウイルス感染患者の対応に充てるべきと報道された(「「診療の半分を感染者対応に」 東京「佼成病院」が訴え」FNN 2020年5月4日)。これは通常の診療がその分、手薄になることを意味する。超過死亡への考慮がなされていない。目の前の問題を解決するために全力投球という昭和的な発想である。
佼成病院は林田医療裁判の舞台になった。佼成病院は母親の延命につながる治療を全て拒否した長男の意向のみに従い、他の家族の意向を確認しなかった。佼成病院の新型コロナウイルス対応は、治療に消極的な家族が一人でもいれば、その人物をキーパーソンとし、それに乗っかる対応に拍車がかかるのではないかと懸念する。この点は患者の権利を守る会が公開質問状で「複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください」と繰り返し質問していることは意味がある。
FNN報道は佼成病院について「現在は発熱外来を開いて、積極的に感染者の受け入れを行っている」とするが、発熱外来は杉並区の施策である。佼成病院は杉並区の入院・外来体制強化補助事業で毎月2億円ほどの補助を受ける。さらに発熱外来は開業医がローテーションで出向して担当する。開業医の費用も杉並区の医師確保支援事業から支出される。佼成病院独自の取り組みではない。
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