The National Institute of Infectious Diseases admitted after receiving the open letter of inquiry that aerosol infection is the primary route of transmission of the COVID-19.
国立感染症研究所(感染研)は公開質問状後にエアロゾル感染が新型コロナウイルスの主な感染経路になると認めた。公開質問状が社会に良い影響を及ぼした例である。これまで感染研はエアロゾル感染に否定的で、飛沫感染と接触感染だけを挙げた報告書を発表していたため、国内の科学者が「世界の知見とは異なる」と説明を求めて公開質問状を出していた。
新型コロナウイルスは2020年代の世界的関心事である。世界保健機関(WHO)や米疾病対策センター(CDC)は2021年春からエアロゾル感染と飛沫感染を挙げ、接触感染は起きにくいとする見解を示している。エアロゾル感染はウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込んで感染するもの。
ところが、日本では飛沫感染や物を媒介した感染が強調される傾向がある。感染研は2022年1月13日に公表したオミクロン株についての報告書「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第6報)」で以下のようにWHOなどと異なる説明をした。
「実地疫学調査から得られた暫定的な結果からは、従来株やデルタ株によるこれまでの事例と比較し、感染・伝播性はやや高い可能性はあるが、現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と,接触感染と考えられた。また,多くの事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば、換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていた。基本的な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気の徹底等)は有効であることが観察されており、感染対策が守られている場では大規模な感染者発生はみていない」
これに対して感染症や物理学などを専門とする科学者10人が2022年2月1日付で感染研に「「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第6報)」の空気感染(エアロゾル感染)に関わる記述への公開質問状」を提出した。
「新型コロナウイルスの主たる感染の運び手はエアロゾルであって、Fomite infection(接触感染)は稀であることが,世界の科学界のコンセンサスとなっていると考えます。このことは、WHOやCDCも認めており、だからこそCDCは最近医療従事者だけでなく国民へのN95マスク着用の推奨までしているわけです。Nature, Science,BMJ などの学術誌・医学誌でも既にレビュー論文を載せたりeditorialで認めたりしており、日本の科学者も標準的知見として日常的に触れている知見です。しかるに、貴研究所では未だにこれに反する形で、「感染経路は主に飛沫感染と,接触感染」と主張しています」
質問状をまとめた物理学者の本堂毅・東北大准教授(科学技術社会論)は以下のように指摘する。「接触感染が起きるのはまれだと世界で考えられているのに、いまだに主な感染経路が飛沫感染と接触感染と言うのは、日本のウイルスだけが特別と言っているようなものだ。また、その二つで感染するなら換気の有無は関係ないはずで、論理的にもおかしい」(林奈緒美 「「誤った説だ」 科学者が突きつけた怒りの質問状に感染研の答えは」毎日新聞2022年3月12日)
感染研は2022年3月28日に公表した文書「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について」で、主な感染経路にエアロゾル感染、飛沫感染、接触感染の三つを紹介した。
「SARS-CoV-2は、感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染する。その経路は主に3つあり、①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)、②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)、③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)、である」
研究者らはエアロゾル感染を認めたことは評価しつつも、注文もしている(林奈緒美「感染研がエアロゾル感染認める 飛沫、接触の報告書から一転」毎日新聞2022年3月29日)。
本堂毅准教授「世界では接触感染はまれと言われていることをはっきり国民に周知しなければ効果的な対策は広がらない」
愛知県立大の清水宣明教授(感染制御学)「ウイルスを含むエアロゾルで空間が汚染されているから換気が必要ということをしっかり伝えることが重要だ」
新型コロナウイルスは物にとどまる力は弱い。それなのに日本では消毒に熱心であるが、間違った努力になる。本書は遺体にはウイルスは残っていないが、遺族を感染者の遺体に対面させないなどの過剰な対応がとられている(西村秀一、石川森彦『マンガでよくわかる 新型コロナの 読むワクチン』幻冬舎、2022年、149頁)。
私の知人の教師は勤務する学校でクラスターが発生し、濃厚接触者になった。その教師に消毒作業を行わせたという話を聞いた。ウイルスは物よりも、感染した人間の中で生存する。物を消毒するよりも、人間を動かさない方に注力する必要がある。公務員組織は消毒したというアリバイ作りしか考えていないのだろう。
日本の政府や自治体は飲食店にも間違った努力を強いている。飛沫感染ではなく、空気感染が問題であるため、アクリル板も防げない。むしろ、パーティションやビニールカーテンは空気の流れを悪くして逆効果と指摘する(『マンガでよくわかる 新型コロナの 読むワクチン』159頁)。
屋外でも多人数のバーベキューはクラスター発生源になる(『マンガでよくわかる 新型コロナの 読むワクチン』111頁)。空気感染といっても花粉のように町中の空間にウイルスが広がる訳ではない。感染者の近くで同じ空気を吸うことが問題である。それ故に人と一緒にいること、特に会話することが問題になる。Social Distanceは正しい対応である。
『マンガでよくわかる 新型コロナの 読むワクチン』はマスクを重視しているが、「内側の二酸化炭素濃度が上がり、息苦しく集中力が落ちます」とデメリットも指摘する。マスク着用は場所と状況を考慮してメリハリをつけることを推奨する(123頁)。マスクをすれば活動しても大丈夫というようなマスク至上主義に陥っていない。ここからすればマスクは万能ではなく、マスクをしなくても良いように対人接触を減らすNew Normalな生活を追求したい。
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