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執筆者の写真林田医療裁判

佼成病院看護師の新型コロナウイルス感染経路

立正佼成会附属佼成病院(東京都杉並区和田、杏林学園教育関連施設)では患者から女性看護師に新型コロナウイルス(COVID-19; coronavirus disease 2019)が院内感染した。佼成病院の新型コロナウイルス感染はクラスターになりかけたという重大性の割には報道が少なく、具体的な情報が乏しい。東洋経済の報道により、想定感染経路が明らかにされた。


感染経路は二つ考えられる。「1つは80代の男性患者の入院時に尿の掃除や、抱きかかえてベッドに寝かせるなどの介助をしていたこと。もう1つは、マスクをしていたが70代の女性患者と長時間話していたことだ」(井艸恵美「新型コロナ院内感染、そのとき何が起こったか 東京・佼成病院が経験した「苦闘の3週間」」東洋経済Online 2020年4月4日)


感染した看護師がマスクを着けていたことは当初から報道されていた(「国内で新たに8人感染 東京で看護師院内感染か」日本経済新聞2020年2月29日)。マスク至上主義的な発想は改める必要がある。マスクをしていても長時間の会話は危険である。


それにしても、これほど濃厚接触が確認できるのに入院患者の感染判明後も発熱するまで勤務を続けるものなのか。看護師は患者の感染判明後の2020年2月19日から24日まで勤務していた。


入院患者の感染判明は2020年2月18日である。看護師は24日夜に発症した。佼成病院は「看護師は、発症時および発症後の勤務はなく」と発表している(佼成病院 院長 甲能直幸「新型コロナウイルス感染症に関するご報告」2020年2月29日)。発症前の24日まで勤務していたことになる。


病院名は伏せられているが、東京都発表に基づく報道でも看護師が24日まで勤務していたことになっている。「女性は都内の病院に勤めていて、2月24日に発熱やせきの症状が出たため、その後は出勤せず自宅で過ごしていました」(「新型ウイルス 都内の看護師1人感染 死亡した患者の看護担当」NHK 2020年2月29日)。


「女性看護師は、症状が確認された以降は勤務しておらず、誰とも会っていない」(「東京都で新たに女性看護師の感染確認」TBS 2020年2月29日)


佼成病院は19日から診療を休診し、検診や手術、新規入院の受け入れを中止した。入院患者はいるため、看護師が出勤する必要はあるが、接触者を自宅待機させなかったのか。


佼成病院では小児科医の過労自殺事件が起きた。労働者に過重労働を強いる体質は変わっていないのだろうか。佼成病院は杏林学園教育関連施設になっているが、杏林大学医学部付属病院でも過重労働の問題がある。約15人の医師が過労死ラインの月80時間超の残業をしていた。しかも残業代を未払いであった(「杏林大、医師に長時間労働 労基署勧告」日本経済新聞2018年1月20日)。学校法人「杏林学園」は三鷹労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けた(「杏林大の医師、長時間労働 月100時間超の例も 労基署が是正勧告」朝日新聞2018年1月20日)。


接触者の看護師の勤務を発熱するまで続けた佼成病院は14日ルールを考えていないのか。二次感染者からの三次感染は考慮していないのか。佼成病院は感染者4人で新型コロナウイルス院内感染を封じ込めたことになっているが、それが事実であるとしても幸運に負うところが大きく、佼成病院の対応がベストプラクティスにはならない。


病院での新型コロナウイルス院内感染は永寿総合病院(台東区)が深刻である。これは以下のように指摘される。「台東区の病院での院内感染事例は屋形船クラスターとつながっており、無症候もしくは非常に軽症の医療従事者が感染拡大の原因だった可能性がある」(押谷仁「COVID-19への対策の概念」2020年3月29日暫定版、47頁)。佼成病院の場合は看護師が発熱した。それ故に永寿総合病院がダメで佼成病院が良いとの評価は数字しか見ない浅薄になる。「終わりよければ全てよし」や「結果オーライ」は何の反省も生まれない。




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